高校野球を支える人たち

名人芸の仕事師

 今朝(2014.10.30付)の魁新報に大曲工業高校野球部の東北大会準優勝記事が掲載された。
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 記事の中に1枚の写真があった。それは1年生投手のことを取り上げている。ボクはピッチングそのものよりも彼が左手にはめているグラブのことを注目した。この投手は準決勝の最終回に公式戦初登板した選手である。

 実は試合後にグラブのポケットが少し破けていて革紐も切れそうな状態になっていた。
 そのグラブを現場でスポーツ用品店の社長さんが修理してくれた。社長さんのグラブやスパイクなどを修理する腕はピカイチ。
 グラブを手に取り、破けた部分はそれほど大きくはないので大会後に修理することを判断した。
 最初はポケットの破れた箇所の革紐を取り替える予定だったようだが全部交換してグラブを強化させて大会を乗り切ってもらうことにした。
 ハサミでグラブ全体の革紐を切って五本の指がバラバラになった。こうなると何とも頼りない姿だ。
 そこからが社長の本領発揮。グラブの網部分から1.5メートルのほどの一本の革紐で縫い始める。網の上部を縫う時にはこんなことを教えてくれた。
「この巻き方は方向があるんですよ」
「フーン」
「結構、反対に巻いているグラブやミットがあって・・・」
と、言いながらグラブの網の穴の一つ一つに丹念に革紐を通して巻いてゆく。
「巻き方が逆だとどうなるんすか?」
「弱いグラブになるなぁ」
「なるほど・・」
「業者でも知らない人もいて反対に巻いてるものもあるんすよ」
やがて、指の部分までしっかりと縫い上げてゆく。見事なものだ。
 ものの三十分ほどだったろうか。しっかりとしたグラブが姿を現した。社長は自分の手にはめてポンポンとポケット部分をたたいて
「後は本人に聞いてどれだけ緩くするのかきつくするのかを聞いて最終仕上げだ」
と、言う。
 この後、社長はキャッチャー用のミットも修復して決勝戦に間に合うようにしていた。

 ボクは子どもの頃から鍛冶屋さんの仕事が大好きだった。子どもの頃にボクが見えなくなれば「熊カンジ(熊さんの鍛冶屋)にいるはずだ」と探しに来ると発見されたと言われた。
 物作りを見ているのが大好きだったのである。もちろん今も大好きだ。だから社長さんがグラブを修理している場面を見ているのは、懐かしい思いもある。
 グラブやミットは130キロや140キロのスピードボールを捕球している。突然、壊れてしまうこともあるのだろう。そんな時に、このようにサッサッと修理してくれる人がいることは、どんなにか助かることだろう。
 決勝戦でも登板したその選手は好投したと報じている。その左手には修理したグラブがあった。直した社長の喜びもひとしおだろう。
 高校野球を支えるプロの仕事師がいたことにエガッタナァと思いながら球場をあとにしたのである。


夕方、遅くに帰ってきて先日「松島の皓ちゃん」が書いて下さった絵(準決勝の絵物語)と松島高校戦の絵物語の写真を額に入れた。
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これを大曲工業高校の監督さんに届けることにしよう。

と、言うわけで本日のブログはこれにて終了です。
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